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アトピー性皮膚炎は単なるアレルギー疾患ではありません

八潮市・草加市・三郷市の動物病院 ペットクリニッククローバー 院長の藤井和恵です。

私たちが日々診察の中で向き合っている「犬のアトピー性皮膚炎」についてお話しします。

「うちの子、アトピーなんです」
「検査でアレルギーが出ました」

このようなお話を受けることがありますが、実は“アトピー性皮膚炎=アレルギー”という単純な構図では説明できないケースが多くあります。
アトピー性皮膚炎は、アレルギーだけではなく、さまざまな原因が関わる“多因子性疾患”
そのため、診断にも治療にも、丁寧で時間をかけた対応が必要となります。


 皮膚のトラブルは「原因の見極め」が大切

私たちが皮膚病を診るとき、ただ「痒みがある」「赤くなっている」などの症状だけで判断することはありません。

特にアトピー性皮膚炎と診断される子の場合、以下のような複数の要因が関係していることが分かっています。

✅ 主な関与因子はこの3つ

  1. 環境アレルゲン(特にハウスダストマイトなど)

  2. 皮膚のバリア機能の異常

  3. 皮膚常在菌のバランス異常(菌交代)

これらが複雑に絡み合いながら、皮膚の痒み・赤み・脱毛といった症状を引き起こしています。つまり、環境中のアレルゲンがトリガーにはなっているものの、
“皮膚そのものの弱さ”“菌の乱れ”といった内的な要因も大きく影響しているのです。


診断には時間がかかる理由

「アトピーですか?すぐわかりますか?」というご質問をいただくこともありますが、アトピー性皮膚炎の診断は除外診断といって、他の病気を丁寧に排除していくことが基本です。

例えば…

  • ノミアレルギー性皮膚炎

  • 食物アレルギー

  • 膿皮症やマラセチア皮膚炎(二次感染)

  • 内分泌疾患(甲状腺機能低下症など)

これらと症状が似ているため、すぐに「アトピー」と決めつけてはいけないのです。
飼い主様と一緒に生活環境や食事、発症時期や年齢、過去の治療歴なども丁寧に見直しながら、必要な検査やトライアル治療を重ねていきます。


 重症度の評価は治療の第一歩

アトピーと診断された場合でも、症状の重さ(重症度)によって治療内容は大きく異なります。

重症度 症状の特徴 主な治療方針
軽症 限局的なかゆみ、赤み 外用療法や保湿を中心に経過観察
中等症 広範囲への拡大、繰り返す悪化 内服薬とスキンケアの併用
重症 全身のかゆみ、脱毛、生活の質(QOL)の低下 免疫抑制剤、生物学的製剤などを含む長期計画

当院では、かゆみスコア(VAS)や皮膚の見た目(CADESI)なども参考にしながら、毎回の診察で状態を数値化・記録しています。
これにより、「良くなっている」「今は安定期」「再燃の兆候がある」といった変化にもすぐに気づくことができます。


 治療は“長く付き合うもの”だからこそ

アトピー性皮膚炎は完治する病気ではなく、「コントロールする病気」です。完治はないと思っています。

その子にとって最も快適で、生活の質が保たれる状態をキープすることが治療のゴールです。
そのため、治療薬だけに頼らず、
 

  • 日々のスキンケア

  • こまめな環境整備(ダニ対策など)

  • 体質に合わせた栄養管理

  • 皮膚バリアを支えるサプリメントや漢方ケア

など、生活全体を通してのケアが非常に大切になります。


 中医学・腸活の視点からもサポートしています

クローバーでは、皮膚科診療に中医学(漢方)や腸活の考え方も積極的に取り入れています。

「皮膚は内臓の鏡」と言われるように、腸内環境の乱れや体の中のバランスの乱れが、皮膚に影響を及ぼすケースも少なくありません。
実際に、当院では乳酸菌・プレバイオティクスのサプリや、体質に合わせた漢方薬を取り入れることで、薬に頼りすぎない優しい治療を目指しています。


 最後に:大切なパートナーと、心地よく暮らすために

アトピー性皮膚炎と向き合うことは、時に根気が必要です。
でも、それは「あなたの愛犬のためにできることが、まだまだたくさんある」ということでもあります。

痒みで眠れない、遊べない、ごはんに集中できない…。
そんな毎日から少しでも解放されるように、クローバーでは飼い主さまと一緒に考え、寄り添い、最適なプランを見つけていきます。

「薬だけじゃなく、体質から見直してあげたい」
そんな方は、ぜひ一度ご相談くださいね


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