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猫が病院を嫌いになる本当の理由 〜通院ストレスを減らすためにできること〜
猫が病院を嫌いになる本当の理由 〜通院ストレスを減らすためにできること〜
「キャリーを見るだけで逃げる」「病院に着いた途端、固まってしまう」「怒って噛んでしまう」
このような猫ちゃんの姿に、心を痛めている飼い主さんはとても多いのではないでしょうか。
実は、猫が病院を嫌いになるのは、わがままでも、性格の問題でもありません。
そこには、猫ならではの繊細な感覚と記憶の仕組みが深く関係しています。
今回は、獣医師の視点から「猫が病院を嫌いになる本当の理由」と「通院ストレスを減らすための具体的な工夫」について、わかりやすく解説します。
猫が病院を嫌いになる本当の理由
猫は本来、縄張りの中で静かに暮らす生き物です。急な環境変化や大きな刺激をとても苦手とします。
病院には、
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知らない匂い
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他の動物の気配
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大きな物音
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逃げ場のない空間
など、猫にとって不安要素がたくさん存在しています。
さらに、
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押さえられた
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痛みを感じた
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苦しい処置を受けた
といった体験が一度でもあると、その時の「怖い」「不安」「嫌だ」という感情を、場所・人・キャリー・匂いと一緒にセットで記憶します。
猫は「何をされたか」よりも、「その時どう感じたか」を強く覚える生き物です。
そのため、次に同じ状況になると、記憶がよみがえり、逃げる・固まる・攻撃的になるなどの行動につながります。
これは性格が悪いわけでも、しつけの問題でもなく、自分の身を守るための本能的な防衛反応なのです。
通院ストレスを減らすためにできる工夫
猫の病院嫌いは、日頃のちょっとした工夫で大きく軽減することができます。
① キャリーバッグは「普段から」出しておく
病院の時だけキャリーを出すと、猫はすぐに「嫌なことが起きる合図」と学習してしまいます。
普段からリビングなどに置き、
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寝床
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隠れ家
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遊び場
として使えるようにしておくことで、キャリー=安心できる場所という印象に変わっていきます。
② いつもの匂いを活用する
キャリーの中には、洗いたてのタオルよりも、普段使っている毛布やベッドの一部を入れるのがおすすめです。
自分の匂いがあることで安心感が高まり、移動中の緊張を和らげる効果があります。
③ 布をかけて視界を遮る
移動中、キャリーの上から布をかけてあげることで、周囲の刺激を大きく減らすことができます。
視覚情報が減るだけでも、猫の心拍数や緊張度は下がることがわかっています。
④ フェロモン製剤の活用
フェリウェイなどの猫用フェロモン製剤を、キャリーにかける布に少量スプレーしておくと、不安軽減のサポートになります。
※直接猫に噴霧することは避け、必ず布などに使用してください。
⑤ 声かけは「前向き」が大切
通院時、つい
「痛いね」「嫌だね」「かわいそうに」
と言ってしまいがちですが、実はこの声かけは逆効果になることがあります。
猫は言葉の意味よりも、声のトーンと感情を敏感に感じ取ります。
不安そうな声や同情のこもった声は、猫の緊張をさらに高めてしまうことがあるのです。
おすすめの声かけは、
「えらいね」「頑張ってるね」「大丈夫、良くなるよ」
といった、落ち着いた前向きな言葉。
飼い主さんの穏やかな声と表情は、猫にとって何よりの安心材料になります。
ペットクリニッククローバー 院長 藤井和恵(獣医師・国際中医師)からのひとこと
猫は、「嫌な記憶」だけで生きているわけではありません。
安心できる体験を重ねることで、病院に対する印象は、少しずつやさしく変わっていきます。
通院は、猫にとっても飼い主さんにとっても大きな出来事。
だからこそ、通院そのものより、通院中の空気感を大切にしてあげてください。
小さな工夫の積み重ねが、猫の一生の通院を、ぐっと楽なものにしてくれます。
不安なことや心配なことがあれば、いつでもお気軽にご相談ください。
私たちは、猫ちゃんと飼い主さんが、少しでも安心して通院できるお手伝いをしていきたいと考えています。

